天使の鎮魂歌
6話 意義
いじめられっ子の零は、自殺をするため、使われていない廃墟ビルの屋上にいる。
死を前にして怖くなった零がであったのは、一人の男。
その男も、どこか不思議な雰囲気で…。
ジャンルタグ
美形×平凡, 訳ありそうな攻め, いじめられっ子受け
地雷要素
虐待 親近相姦 いじめ 横恋慕
翌日、零は思い出したようにスマホを手に取った。居候を始めたその日から、カナタにスマホは電源を落とすように言われていた。テレビでは、零を報道しているようなそぶりはなかった。警察がうろうろしているなんてこともない。きっと、携帯に連絡も来ていないのだろう。
それはなんだか、寂しくなった。
そうして、だんだん、怖くなった。
カナタが一人で出かけている今なら、スマホを触れる気がした。
ぴろん。
軽快なシステム音で電源がつく。うるさく高ぶる鼓動の音なんか無視して、スマホはシステムを起動させる。
てろん、てろん。とシステム音が静かな室内に鳴り響く。
From:はじめ
兄ちゃん?もう、いつもの時間なんだけど、どこにいるの?
From:はじめ
兄ちゃん?そこどこ?なんでまたそこにいるの?
From:はじめ
にいちゃん、かえってきて!
From:はじめ
にいちゃん!かえってきてよ!どこで何してるの!?
From:はじめ
メッセージも届かないんだけど、どういうこと?
From:はじめ
なあ!今更どこに行くんだよ!おまえの居場所は僕のところだろ!!早く帰って来いよ!!
From:はじめ
ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい・・・
From:はじめ
かえってきて、さみしいよ。
弟からのメッセージが大量にたまっている。
短いメッセージ。しかし。
(はじめが…はじめが寂しがってる…。…あれ・・・?僕も、・・・さみしい。)
その感情に気づくと、零は途端にさみしい気持ちに押しつぶされそうになる。
(必要とされてる…必要とされてる…。さみしい、さみしい。ぼくだってさみしい!)
気づけば零は、弟が待つ家の玄関でたたずんでいた。時刻は真昼間。誰かがいるはずなど、無いというのに。
ちらり。と零の部屋のカーテンが揺れ、小さな隙間から見慣れた顔がのぞく。
「はじめ。なんでそこに…?」
窓の中、見開かれた瞳はすぐに吊り上がり、窓から見えなくなる。一瞬、あっけにとられていると玄関が勢いよく開き、一の腕に力いっぱい引っ張られる。
「っぃ…!」
真っ暗な玄関に引きずり込まれる。つかまれたままの勢いで、玄関の固いタイルへ引きずり倒される。
がつん。
「どこに!いってたんだよ!!!ずっと!!連絡も!!返さないで!!!」
激高したその勢いのまま、零はタイルへ何度も頭を打ち付けられる。
「い、いだい。い゛だいよ。いだい゛。はじめ゛、いたいよ゛。ごめんなさい、ごめんなさい。」
すすり泣きながら、謝罪をする。その声も聞かないとばかりに打ち付ける。
「あ、血・・・。」
一が一言つぶやく。そのころには、零の視界は開かなかった。どろりとした液体が額を伝う。
「はじめ…、ごめんなさい…。」
そう呟くと、零は意識を手放した。