相談役、たけるくん!
平凡君がまたしても騒がしいアンチ王道に出くわすだけ。
王道学園に所属する平凡男子、やすながたけるは、一般生徒たちの相談役をしている。
相談に乗るうえでいろんなひとたちに好かれていく…
そんな短編集。
ジャンルタグ
美形×平凡, チワワ系×平凡, カワイイ系の攻め, 王道学園もの, 転入生攻め
地雷要素
特になし
放課後、保永 猛は自分の寮に帰ろうとしている。
「あー!!みつけた!!」
後方から聞こえた大声に保永は驚きながら振り向く。視線の先にいたのは食堂で騒いでいた生徒だ。
「あの日からずっと探してたのに、なんで隠れてたんだよ。照れ隠しか?」
と彼は保永の腕に自分の腕を絡ませほおずりする。
「あの・・?」と、困惑知たような顔を向けるが、彼は気づかず話し続ける。
「お前名前なんて言うんだ?」
「ん・・?保永猛だけど・・・。」
そう保永が答えると、顔が輝く。
「たける!たけるだな!」
そう言って和師は保永の腕にほおずりする。保永のほうはというと、いきなりの近距離となれなれしい態度に思考が追い付いていない。(はて、自分は彼に好かれるようなことをしただろうか。)そう思いながら和師をぼんやりと見つめる。
「な、なんだよ、そんな熱い視線・・・。照れちゃうだろ!あ!この間たけるが言ってたことを考えてみたんだ。確かに、いうことを聞いて二階席に行かないようにしたら、少しだけ絡まれることが少なくなったんだ!全部猛のおかげだ。」
そう言って保永へ熱い視線を送る。和師のほうが背が低いため上目遣いでのぞいている姿は、はたから見たらかわいいものだろう。
「俺、親に行って寮の部屋を変えてもらえるようにお願いしてもらってるんだ。願いが叶ったら、いつでも一緒にいられるぞ・・・?」
と、もはやうっとりしたように保永を見つめる和師に、保永は若干の恐怖を覚える。
「いや・・・。学園で決まったものを個人の力で帰ることはよくない。来年の寮がえで一緒になれればそれでいいんじゃないかな?」
若干ひきつった笑顔でそう返すと、和師は頬を膨らませる。
「それじゃ遅いだろ?全は急げっていうんだから、早めに行動しないと…。」
「あ、服にごみついてるぞ。」
そう言って和師はふい、と何かをとる。
「え、ああ。ついてました?」
「おう!あ!じゃあ、俺もう行くな!一緒の部屋になれるといいな!!じゃーなー!」
そう言って和師は走って去っていく。
保永は少しの間ボーっとしていると、は、と気づいたようにブレザーのポケットをまさぐる。
出てきたのは小さいビー玉ほどしかない機械。今度出会ったときに返そう・・・。そう思いマイク部分にテープを張る。厄介な人間に好かれてしまったらしい。
一方部屋ではくぐもる音声を聞き、「賢いなぁ。やっぱり好き。」と恍惚とした表情を浮かべていた。