相談役、たけるくん!
平凡君がチワワ達に惚れられているだけの話
王道学園に所属する平凡男子、やすながたけるは、一般生徒たちの相談役をしている。
相談に乗るうえでいろんなひとたちに好かれていく…
そんな短編集。
ジャンルタグ
チワワ系×平凡, カワイイ系の攻め, 王道学園もの, 親衛隊隊長攻め
地雷要素
とくになし
小昼を頂く時間。少し小さめな部屋。3-C組、保永 猛は癒されていた。目の前に広がるのは決して癒し効果のあるものではないが、何分、かわいいもの好きの性分といえるものか。
「会長様ってば、ひどいの!落としたハンカチを渡すために少し手に触れただけで、顔をしかめて除菌シートで手を拭いたの!」
そう涙ながらに訴えてくるのは、かわいらしい容姿をしている男の子。メイクもしっかりして好きな人のために美しくなろうという意気込みをとても素晴らしいと感じる。しかし、状況は許されたものじゃない。今まさに涙でメイクを崩しながら訴えてくる内容はどうにも海容できるものではない。しかし事情があるものでもあるのだ。
「そうか、それは辛かったな。憧れの人にその態度を向けられるのは、さぞかし辛かったと思う。」
「そうでしょ!?」
猛の言葉にチワワのようにかわいい累は目を潤ませ勢いよく一言する。そんな彼に猛は普段の平凡な容姿からは想像がつかない艶麗えんれいな笑みを浮かべて、累の頭をなでる。
「生徒会長さまは、今とても苦しい日々を過ごしてるからね。それに、彼自身潔癖症を持ってるんだ。普段だったら気を使える人ではあるんだけど、状況が状況だろう?なかなかそういうわけにはいかないのさ。」
わかってくれる?と先ほどのなまめかしさはなりを潜め、さわやかに笑いながら累の眼をのぞき込んだ。
その一連の流れをポッとした顔でじっと見つめていた累は「う、うん。わかったよ。」と話す。
「それはよかった。さ、これで涙を拭いて。せっかくのかわいいお顔が台無しになっちゃう。」
そういってポケットからティッシュを取り出すとはい。と差し出す。
「あ、ありがとう。」
そう受けとって目元の涙をふく。
「あ、あの、ありがとね。なんだか踏ん切りついた。また親衛隊として活動できそう。」
「うん。よかった。頑張ってね。」
猛のその言葉を受けた累は小部屋を出た。猛は次の相談者のために部屋に残るのだ。
「ねえ、やばい。マジで腰ぬかすかと思った。」
累は親衛隊の部屋に戻ると、仲間たちにそう声をかけた。
「えー!?どうだった?どうだった?」
「もう、えっっっち!押し倒すかと思った!エッチな顔で笑ってくれて、そのあとにこやかにのぞき込まれるの!しあわせだった!」
そう言ってキャッキャウフフしている彼らには、猛に秘密にしていることがある。いや、この場にいる者だけでなく、相談に来る生徒全員と言えるだろう。【憧れと恋情は別】大半の生徒がいまや猛にガチ恋している。あわよくばを狙うが、猛自身は完璧に一線を引いているため、なかなかそこまでいかない。いまだに思いを告げたものはいない。
知らぬは猛のみである。